中国の大学のトイレ掃除の後、
学生さんと先生を対象に講演させていただきました。
その後の質疑応答で、生徒から質問がありました。
そのなかの一つ、
立派な体格をした学生からの質問は
「私は大きなことをやるために大学へ来て勉強しています。
掃除のような誰にも顧みられない小さなことにこだわっていては、
大きなことができないのではないでしょうか」というものでした。
そこで私はその学生に、
「あなたは、大勢の人が見ている前で、
道に落ちている一本のタバコの吸殻を拾うことができますか」と尋ねたところ、
「拾えません」「恥ずかしいから、とてもできません」という返事でした。
「私は、毎朝、大勢の目の前で、ゴミ拾いをやっています。
なんとなく気恥ずかしいのはわかります。
その人たちの足元に落ちている吸殻を拾うには、相当抵抗があります。
しかし、人間というのは、そうした抵抗を超えていくことで心が鍛えられ、
より成長できるものだと思います。
ですから、吸殻を一日に少しずつでも拾って歩けば、
そのたびに大きな勇気が得られることになります。
私は、この吸殻や空き缶などをただ拾うことだけが目的ではなく、
日本をゴミ一つない国にしたいと思っています。
これを小さなことだと思いますか?」と尋ねました。
学生は即座に「大きいことだと思います」と明快にいってくれました。
「そうでしょう。やっている行為は小さく見えても、実は大きな意味があるんです」
とお話ししました。
小さなことでも、それを実行するには大きな勇気が要ります。
ですから、道に落ちているゴミも、
日々自分を鍛えてくれる大事な条件だと考えることもできるのです。
※『掃除道』(鍵山秀三郎著)より